スペシャルインタビュー

初代INFOBARから8年。深澤直人氏が再びデザインを手がけた、「iida」初のスマートフォン「INFOBAR A01」について、KDDI株式会社 プロダクト企画本部の秋葉健さん(以下、秋葉氏)、近藤隆行さん(以下、近藤氏)、合澤智子さん(以下、合澤氏)にお話をお伺いしました。
―― 何故iida初のスマートフォンをINFOBARで出そうと思ったのですか?
INFOBAR その1

秋葉氏

INFOBARは元々10年前の2001年の5月に「info.bar」としてコンセプトモデルを出しました。それは、表面は携帯電話で、裏面はPDA(携帯情報端末)というモノだったんです。10年前、既にスマートフォン時代の到来を見越しており、思想としてスマートフォンとの親和性が非常に高いということがありました。
―― 「Gシリーズ」なども親和性がありそうです。その中でも「INFOBAR」に決まったのは、過去のコンセプトモデルがあったからなのですか?

秋葉氏

コンセプトモデルの親和性もきっかけの一つですが、もう一つの大きな要因は、お客様の声を定量的にとっており、その中で「INFOBAR」はずっと高いブランド力をキープしていた事です。
―― 社内で「他のシリーズ、種類がいい!」という異論はなかったのですか?

秋葉氏

企画が始まったのが1年8か月前の2009年の11月なのですが、有力なスマートフォンはまだ「iPhone」ぐらいしかありませんでした。”「INFOBAR」を本当にスマートフォンにするのか?”という所から議論していったので、企画の最初の時は特に異論はありませんでした。
―― それだけ「INFOBAR」は思い入れのある端末なんですね。

秋葉氏

実は、近藤も初代「INFOBAR」モデルを担当していたり、周りに当時の「INFOBAR」関係者が結構いたので、その方達も協力してくれました。
―― 初代「INFOBAR」は携帯業界にデザインという部分で革新的なモデルでした。今回、スマートフォンでもある意味初のデザインモデルだと思うのですが、どのような市場インパクトを期待しますか?

秋葉氏

「INFOBAR」というモデルはずっと、”新しさ”みたいなモノを提供してきたので、今回もそういった新しさを提供したいと思っていました。スマートフォンの時代になって、”私たちがやるべきことは何か”ということをグループ内でよくディスカッションをして、その時に外側のデザインだけではなくて、中のユーザーインターフェース(以下、UI)ですとか、アプリケーションですとか、周辺アイテムなどもひっくるめて一つの世界観を打ち出していこう、それで新しさを出していこうという話をしていました。それでUIのデザインも中村勇吾さんに概念から考えていただいて作りました。なので、外側を見てなんとなくかわいいね、新しいね、という方が、中身を触ってみて初めて、「ああ、こういったことなのか、さすがINFOBARだね」と言っていただけるような、そういう所を考えました。
―― デザインでは「iPhone」が先にデザインで先行しているイメージがあります。「INFOBAR」はガチンコ勝負を仕掛ける、という感じでしょうか、それとも別のターゲットでしょうか。
INFOBAR その2

秋葉氏

「iPhone」と対決というよりも、「INFOBAR」として出すからには、スマートフォンを購入されるボリュームゾーンである、20~30代の男女を狙いたいというのがあります。そこから逃げて狭いパイを狙うことは考えていません。ただ、「iPhone」とはちょっと価値観の違う製品だと思っています。「iPhone」はとても合理的にできていて、”合理的の極み”みたいな洗練された美しさがあると思うんですけれども、「INFOBAR」は”日本らしさ”という部分もありつつ・・・。例えば、合理的に作るのであれば、フォルムも丸みを帯びた形状ではなく、スパッと四角く作った方がいいとか、カラーバリエーションもこんなに揃えず、黒一色でいく、といったことが求められると思うんです。なので、スマートフォンとしての王道は狙いながらも、細やかな気遣いも手を抜かずにいきたいな、という思いはあります。
―― 今回は「iida」モデルでは珍しく(笑)機能面も全部入りですね。いわゆるガラスマ機能を備えていますが、そういった部分も、ボリュームゾーンを狙う、という意気込みもあるのでしょうか。

近藤氏

それもありますね。デザイン優先で何かが犠牲になるのではなく、デザインと機能のベストバランスを最初から目指していました。飛び抜けたカメラの画素数や液晶サイズはありませんが、コンパクトなサイズにワンセグやFelica、赤外線といった日本機能を搭載し、さらに海外ローミングにも対応するなど必要な機能はすべて搭載したつもりです。
―― 「iida」モデルではこれも珍しくカラーバリエーション(以下、カラバリ)は4色ですね。ここにも何か意図があるのですか?
INFOBAR その3

近藤氏

確かに「iida」シリーズでは3色が多かったのですが、「INFOBAR」を振り返ると初代もINFOBAR2も4色展開だったんです。それがあったから4色に決まっていたわけではありませんが、最終的に今回も4色展開になりました。過去のINFOBARを代表するカラーと新色の組み合わせで幅広いお客様に自信を持ってお勧めできるカラバリになりました。
―― それでは、それぞれのカラバリについての狙いを教えてください。
INFOBAR その4

秋葉氏

NISHIKIGOIはINFOBARのアイデンティティのような色なので、形状が今までと大きく異なる中でINFOBARらしさを感じて頂くためにも”これはいれましょう”というのは共通の認識でありました。INFOBARファンのためのカラーといえると思います。また、ベーシックな色を好まれるお客様のためにいくつかカラーを検討しKUROが選ばれました。更に新しさを求められるお客様のためにINFOBARらしくマルチカラーで新提案をしたいと思い、試行錯誤の結果HACCAとCHOCOMINTが出来上がりました。
―― 結果的にHACCAとCHOCOMINTが残ったのはなぜですか?
INFOBAR その5INFOBAR その6

秋葉氏

HACCAは差し色の緑が入ってはいますが、比較的ベーシックな色を使っているので、万人受けするだろうと選ばれました。CHOCOMINTは発売時期が夏なので、水色系を入れたいという議論が最初にありました。「INFOBAR」として、過去に水色系というのは候補に上がるも商品化されることがなくて、なかなか難しい色だったんですね。最後の最後にメンバー全員が納得できるカラーが出てきて、CHOCOMINTが採用になりました。バランス的にも4色展開で黒白赤青というのはいいですしね。
―― UIですが、今までのスマートフォンはアイコンが並んでいるのが当たり前で、そのアイコンの整理の仕方、クリック時のエフェクトの違いに差があるだけ、というのが当たり前の世界だったと思います。このような斬新なUIにした理由はどういった所からなのでしょうか。

合澤氏

INFOBARのOSがアンドロイドに決まってからなので、1年前(2010年5月)くらいから、中村勇吾さんとコンセプトを考え始めました。今までの携帯の「iida」モデルも、グラフィックで端末との世界観の統一をしていましたが、操作性や、経験とか、そういったモノは共通になっていました。スマートフォンはオープンな世界なので、操作感も含めた「iida」らしさを出したいなと思っていました。先ほど「iPhone」の話が出ましたが、「iPhone」は端末からUIまで垂直統合で、ガッツリOSレベルまで入ってやっているんですね。私達が出来ることは「アンドロイドのOS上でいかに、使いやすいUIを考えるか」だと思っていました。その頃のアンドロイド端末のUIは、デザインもパフォーマンスも使いにくい部分がありました。そういう所を、いかに良く改善できるかを勇吾さんと考えました。
アイコンがあって、ウィジェットがあって、ホーム画面があって、基本的な要素は同じで、そんなに大きなことはしていないんですが、細かいことを積み上げることによって、デザイン的にも新しさを感じていただけたと思っています。
特徴的には縦に長い構成になっていたり、1つの画面でホームとランチャーという今までのアンドロイド端末では2面になっていたモノを1面で管理できる点ですね。ホントに単純に、アンドロイドでこういうところがちょっと面倒くさいよね、とか、ウィジェットとショートカットがずらっと並ぶとデザイン的にもよろしくないよね、探しにくいよね、という所を1つずつ改善していきました。
―― 縦スクロールにはどういった意図があるのですか?

合澤氏

その頃は、「iPhone」もアンドロイドも横スクロールだったので、それが当たり前の様に思われていましたが、今までの携帯ではメールやブラウジングなど、縦の操作に慣れているんですよね。

秋葉氏

スマートフォンってもうWebの世界ですしね。横っていうのは本をめくる、というのはありますが、スマートフォンであれば縦スクロールで完結している操作が多いな、ということで。

合澤氏

あと、一つ一つがパネルという概念があったので、パネルのサイズ変更や、ダウンロードするとどんどん追加される事をうまく表現するには縦に積み重なっていく動きかな、ということで、縦の構成になりました。
―― 確かに、縦スクロールは今までの携帯に慣れていると、とても見やすく、操作しやすく感じました。PCのブラウジングも縦スクロールが当たり前ですし。

合澤氏

今となっては、この縦に構成された画面がいわゆるインフォメーション・バーですよね(笑)。

秋葉氏

よく突っ込まれるんですよ、スマートフォンになったら、全然bar(棒)じゃないじゃないか、と(笑)。もともと英語の「Information bar(情報の棒)」から「INFOBAR」がきていて、縦型の棒型スリム携帯だったのですが、スマートフォンだとbarじゃないので。いやいや、中がbarだと(笑)。

合澤氏

カレンダーや今日の予定、Twitterの更新情報が、ホーム上に出てきます。中のアプリケーションのインフォメーションが外にしみ出している、それが一つのbarになっているUIというイメージです(まさに、インフォメションバー!)。
―― 確かに、海外製品と日本製品の中間のような、洗練されつつ、受け入れやすいデザインに仕上がっている感じになっていますね。

秋葉氏

職人がいるんですね、アイコン職人、サウンド職人、フォント職人など。それぞれの第一線の方に中村さんがお願いをして、一個一個丁寧に作っているんです。
―― スクロールのスピードもいいですね、行き過ぎないし、速すぎない、という感じで。
INFOBAR その7

近藤氏

このスクロールスピードも時間をかけてチューニングしました。
実際には、ビデオで撮影してスロー再生を何度も繰り返しながら調整した結果、心地よいスピードと動きを実現することができました。1.4GHzの高速CPU(MSM8655)の効果も大きいと思います。

合澤氏

UIなので、スクロールが遅いと使ってもらえないという意識があって、機能とデザインとのトレードオフも考えましたし、触った時のバウンド・エフェクトとか、気持ちいいといわれる部分を非常にこだわりました。
―― 音のこだわりはいかがでしょうか。(いくつか実際に音を鳴らす)。

合澤氏

プリセットはロング、ショートで23種類ぐらい入っています。クリエーターさんと、”面白くて、他にはない音にしていこう”と取り組んだものが実現した形です。
―― 電子音的だけれども、どこか懐かしいような、ノスタルジックな音になっていて面白いですね。
―― まだまだ苦労されたこと、ありますよね?

秋葉氏

いろいろありすぎて・・・(笑)。あまり気付かれないポイントとしては、おもて面の液晶パネルの額縁部分を均等に回すことが大変でした。通常のスマートフォンは、アンテナ等の関係もあって、通話で耳に当てる部分がおデコのように幅があります。もちろん、サイズを大きくすればそれだけ詰めることもできるのですが、このサイズ感で、このように液晶の周りを綺麗に額縁のようにするのは、意外と苦労したポイントです。

近藤氏

補足すると、「INFOBAR2」の時のデザインも意識して額縁の部分を残しています。
―― そういった形状でいうと、初代のキューブ的な雰囲気と2台目のフラットのデザイン。融合したような感じですよね。

秋葉氏

INFOBAR2からの進化の形だと思っています。全体的な形状はINFOBAR2に似ていますが、例えばキーについては、フラットだったINFOBAR2の形状では無く、見なくてもドコを触っているかわかるように凹凸のある初代INFOBARに近い形状にしました。
―― 確かに、ボタンのアール(円弧)の部分が気持ちよく指がストップしますね。押しやすいですし。その他ありますか?

近藤氏

正面だけではなく背面のデザインにも自信を持っています。シンプルで突起のないフラットなデザインが持ち易さと手になじむデザインを実現しています。
実は今だから言えますが、開発当初はカメラ部分だけは1mm程度突起していたんです。デザイナーも社内も突起を了承していましたが、私自身シックリきていなかったので一人でメーカーの設計者と裏で検討を継続して現在のフラットな背面を実現したのです。
チームのメンバーにも内緒で進めていたので、突然フラットになったサンプル機を見せた時のメンバーの驚きは今でも覚えていますね(笑)
―― UIではいかがですか?

合澤氏

メニューに、「スクロール吸着 オン、オフ」というのがあるんです。スクロールしていると、グリッド単位でスクロールのスピードが止まる(吸着)んですね。この具合が、なかなか気持ちよく吸着してくれなかったので、吸着をなくそうかという検討もありました。結局、フワッといい感じの曲線で吸着してくれるようになったんですけれども、人によっては吸着なしに自分の好きな所で止まって欲しい人もいるだろうと思うので、最終的にはオンオフで残してしまいました(笑)。かなりマニアックなモノなんですけれども。

秋葉氏

こういったモノほど人によって好みがわかれるので、両方の人の意見を取り入れてオンオフで残すことになりました。

合澤氏

あと、スクロールバーのでかた、消え方のアニメーションだったり、一つ一つ細かい所までメーカーさんとデザイナーさんと何十回も動作検証を重ねました。終盤になって、SHARPさんには頑張ってもらっていいパフォーマンスを出せました。
―― アクセサリーもいろいろありますね。シリコンカバーを付けるとイメージ変わりますね。やはりそういう意図があったのですか。
INFOBAR その8

秋葉氏

そうですね。今までのカバーは背面に絵を書くとか、素材でどう見せる、といった事だったと思うのですが、端末のデザインを担当された深澤さんにカバーも依頼することで「INFOBAR」の正面から見た顔を活かし、”着けると正面からの印象も変わって、もう一つ楽しめるようなモノ”が出来上がりました。
―― 実際に全てのカバーのカラバリをすべての端末のカラバリに合わせてみましたが、意外と、どの色の組み合わせでも合うようになっているんですね。カバーによってイメージがガラっと変わって。
INFOBAR その9

秋葉氏

「INFOBAR」の特徴である、ボタンの凹凸部分をカバーが覆うことで印象が変わりますし、ボタン色の近似色をカラーに用いているので、色を合わせて馴染むコーディネートを楽しんだり、全く違う色を使って弾けるコーディネートにしたり色々楽しめるようになっています。
―― レザージャケットもあるのですね。
INFOBAR その10

秋葉氏

レザーの商品って、メガネケースとか、手帳とかいろいろあると思うのですが、今後、スマートフォンカバーでもレザーケースっていうのが定番になるんじゃないかと思っています。今後スタンダードになるだろうスマートフォンレザーケースの王道の形というか、それを作りましょう、ということで、端末の形状に沿ってシンプルなデザインにしました。皮ですので、使い続けることで自分なりに柔らかくなって、味が出たりします。「INFOBAR」をそのまんま使いたい、という人にはオススメのケースです。
―― 気分によってUIも変えることができるのも良いですね。
INFOBAR その10

合澤氏

そうですね。中村勇吾さんもおっしゃっているのですが、本棚を見るとその人の性格などわかったりしますが、同じように、このUIも写真の内容だったり、電話、メールの配置だったりで、その人の使い方や個性が出ると思います。カスタマイズ性に富んでいるので、使いながら楽しんでもらいたいですね。
セクションバーという機能でカテゴリー分けできますので、ファミリーの写真と、その家族のコンタクトリストのカテゴリや、ビジネスカテゴリなどに分けたりですとか、その人の使い方でいろんな表情になっていくと思います。すっきり管理ができ、かつ無機的に管理するのではなくて、その人の人となりが出てくるような。テーマを変えるだけでもガラっと雰囲気が変わります。今後、テーマはダウンロードができるようになるので、愛着をもって楽しめるモノを提供していきたいと思っています。
―― 本日はありがとうございました。

iida

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